なにかの技術メモ置き場

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@インフラエンジニア

自作キーボード「sphh jp」を作ってみた

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目次

概要

自作キーボード「sphh jp」のビルドログ。

経緯

  • デスクワークの姿勢が悪く、首に負担になっていた。
  • 調べたら分割キーボードが見つかったが、日本語配列の製品はキー配列が好みとマッチしない。さらに市販されている製品が少ないため、選択肢が限られる。

※カーソルキーと一番右の列のキーがしっくり来ない。

  • さらに調べると自作キーボードの世界にたどり着いた。ここでも結局ほとんどが英字配列だが、1つだけ要件を満たすキーボードに出会った。
    • 分割キーボードであること。
    • 日本語配列であること。
    • テンキーレスであること(コンパクトであること)。
    • カーソルキーがあると嬉しい。
  • はんだ付け未経験なのがネックだったが、この機にトライしてみた。なお、このキーボードを自作する前にはんだ付けを3日ほど練習した。

構成

今回作成したキーボードの主要パーツは以下。

  • Keyboard: sphh jp
  • Keyswitch: Gateron Caps V2 Switches 3 Pins Milkey Brown
  • Keycap: Majestouch (P/N: FKCS108BB)

準備

  • はんだ付けに必要な工具一式として以下を揃えた。 none06.hatenadiary.org
  • こちらがたいへん参考になった。 salicylic-acid3.hatenablog.com
  • 遊舎工房さんの工作室(有料)を利用することで、工具一式も借りることができる。さらにどうしてもうまくいかないときは技術サポートもお願いできる(追加料金)。 yushakobo.jp

部材購入

部材 製品名 価格 入力先 備考
キット 【委託】sphh jp 14,850 https://shop.yushakobo.jp/products/consign_sphh-jp -
スイッチソケット(MX用) スイッチ用PCBソケット(10個入り) 1,155(165*7) https://shop.yushakobo.jp/products/a01ps?variant=37665172521121 -
キースイッチ(MX互換) Gateron Caps V2 Switches 3 Pins(10個) Milkey Brown 3,465(495*7) https://shop.yushakobo.jp/products/2808?variant=40821007286433 -
キーキャップ(MX互換) Majestouch 交換用キーキャップセット 日本語108キー・無刻印 FKCS108BB 5,920(2,960*2) https://www.biccamera.com/bc/item/3050564/ -
USB ケーブル(TypeA to micro) - - 家に転がっていたもの -
USB ケーブル(micro to micro) USB AUDIOケーブル (micro B-micro B/0.8m) DH-MBMB08 840 https://www.biccamera.com/bc/item/3352626/ -
合計 - 26,230(+α) - -

手順書(ビルドガイド)

製作者であるa bit keysさまのビルドガイドを参照。 abitkeys.com

作業ログ(ビルドログ)

はんだ付け

すべて表面実装。苦労した。

  • MCU
    後にはんだ不足が発覚した。フラックスがあればブリッジは防ぎやすい。 f:id:none06:20220109224211p:plain:w800
  • 水晶発振子
    後にはんだ不足が発覚した。素子を基盤に置くとランドがわずかしか見えなくなり、細いこて先でもランドを温めるのが難しかった。 f:id:none06:20220109224222p:plain:w800
  • USB micro Type-Bコネクタ
    後にブリッジが発覚した。個人的に最難関のはんだ付け。 f:id:none06:20220109224703p:plain:w800
  • チップ抵抗
    ここまでの素子と比べるとやや易しい。 f:id:none06:20220109224237p:plain:w800 f:id:none06:20220109224256p:plain:w800
  • チップコンデンサ
    チップ抵抗と同じ難易度かと思いきや難しかった。 f:id:none06:20220109224308p:plain:w800 f:id:none06:20220109224318p:plain:w800 f:id:none06:20220109224424p:plain:w800
  • ショットキーバリアダイオード
    ここまでの素子と比べるとさらに易しい。極性があるので向きに注意。 f:id:none06:20220109224433p:plain:w800
  • スイッチングダイオード
    同上。数が多い(70個)。 f:id:none06:20220109224442p:plain:w800
  • スイッチソケット
    簡単。数が多い(70個)。 f:id:none06:20220109224448p:plain:w800

はんだ付けは以上。記念に動画も撮っておいた。


www.youtube.com

PCとの接続確認

ビルドガイドの流れと異なるが、この時点でPCとの接続確認をしておいた。はんだ付けの修正が必要な場合に手戻りをなくすのが目的。

・・・がしかし、認識しない!
原因の切り分けをするにはテスターの使い方や回路図の理解が必要だが、その時間が惜しい。遊舎工房さんの技術サポート(有料)に切り分けを依頼した。基盤を見て不具合を指摘・修正してもらったらあっさり解決した。不具合は以下。

  • USB micro Type-Bコネクタのブリッジ
  • MCUのはんだ不足
  • 水晶振動子のはんだ不足

ということで、PCに接続するといつもの軽快なサウンドが鳴り、認識した!
バイスマネージャで「ATm32U4DFU」と表示される。 f:id:none06:20220109233252p:plain

ファームウェアの書き込み

QMK Toolboxをインストールする。 f:id:none06:20220109233703p:plain よくわからないがドライバもインストールする。 f:id:none06:20220109233712p:plain 起動する。「sphhjp_rev1_via.hex」をダウンロードし、「Local file」に指定する。 f:id:none06:20220109233735p:plain 基盤上の「Reset」端子を1秒ほどピンセットでショートさせ、「Flash」ボタンを押下する。 f:id:none06:20220109233747p:plain ファームウェアの書き込みが完了するとデバイスマネージャの「ATm32U4DFU」がなくなる。 f:id:none06:20220109233801p:plain

キースイッチの仮取り付け

キーの認識テストのため、キースイッチを基盤に仮で取り付ける。すべて取り付けも良いし、写真のように1個を使い回すことも可能。ちなみにここは遊舎工房さんの工作室。 f:id:none06:20220110013809j:plain

各キーの認識テスト

以下のサイトを開いた状態で、キーを押下していく。すべて反応したらOK。
https://config.qmk.fm/#/test/ f:id:none06:20220109233810p:plain

注意点1

Fnキーは単体では反応しないので注意。例えば、Fnキー+1キーでF1が反応すればOK。

キースイッチをトッププレートに固定

仮で取り付けたキースイッチを外し、トッププレートにキースイッチを固定していく。 f:id:none06:20220112001809j:plain

注意点1

割れた・・・
ビルドガイドに『トッププレートの破損に注意して下さい。特に端に近いキースイッチの作業時にご注意下さい。』と書いてあるが、力加減は体験しないとわからなかった。はんだ付けと違って取り返しがつかないぞこれ、どうすんだ・・・ f:id:none06:20220112001821j:plain

2022/1/13追記

ビルドログを公開して半日も経たずして、なんと製作者さまから連絡が!補修用のトッププレートをご準備くださった。諦めていた課題だったため、たいへん助かった。 f:id:none06:20220113193440j:plain f:id:none06:20220113193458j:plain f:id:none06:20220113193452j:plain f:id:none06:20220113193446j:plain

注意点2

左側だとAキーとSキー、右側だと*キーと}キーだけ上下逆なので注意。トッププレートには逆でも固定できてしまうが、後ほど基盤に入らなくて気づいた。 f:id:none06:20220112001835j:plain

トッププレートを基盤に固定

キースイッチの端子を折らないように注意。事前に真っ直ぐにしておいたら思ったよりすんなり入った。 f:id:none06:20220112001852j:plain

ボトムプレートを基盤に固定&ゴム足の取り付け

キットには4個のみのため、まずは上側に取り付け。キーボードの高さと傾きを調整する機能も兼ねるため意外と重要。 f:id:none06:20220110022103j:plain

キーキャップの取り付け

Majestouchの無刻印版を2セット用意。入手に時間がかかった。 f:id:none06:20220116195737j:plain f:id:none06:20220116195742j:plain OEMプロファイルと呼ばれており、列ごとにキー高さが異なる。 f:id:none06:20220116195748j:plain まずは刻印と機能が一致するキーをはめていく。
1個だけフライングしたが、左Shiftキーはテンキーの0キーを使用する。 f:id:none06:20220116195753j:plain 次に刻印は無視して高さと長さが一致するものをはめていく。 f:id:none06:20220116195801j:plain 残念ながら3キーだけ不足するため、2セット目を使用する。なるほどこうしてキーキャップが余っていくのか・・・ f:id:none06:20220116195808j:plain 取り付け完了!美しい・・・ f:id:none06:20220116195813j:plain f:id:none06:20220116195822j:plain 最下段の中央付近だけキーの向きを上下逆に変えた。こうすることで親指を自然に乗せることができる。このアイデアは他の自作キーボード(名前を出してしまうと7sPro)を参考にした。 f:id:none06:20220116195836j:plain f:id:none06:20220116195843j:plain

キーマップのカスタマイズ

ひとまずデフォルトキーマップとする。

キーボードの接続

左右のキーボードを内側のmicro USBコネクタで接続する。左右どちらかのキーボードの外側のmicro USBコネクタでPCに接続する。
f:id:none06:20220116195832j:plain

完成!

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今後について

  • HHKB日本語配列のキーマップに慣れる。もしくは、自由にキーマップをカスタマイズする。
  • ゴム足でキーボードの高さを調整する。奥側(上側)をもっと高くしたい。なお、手前側(下側)にはアクリル板の劣化を防ぐために低めのゴム足を追加した。

あとがき

はんだ付けの表面実装がキツかった。遊舎工房さんの技術サポートがなかったら気持ちが折れそうだったが、完遂すると大きな自信になった。これで他のキーボードは余裕で自作できる・・・!

参考記事

abitkeys.com salicylic-acid3.hatenablog.com